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最初のゴールは「ひとつの作業を、確かめて終えられること」
「AIを導入する」と決めても、日々の仕事のどこが変わるのか見えなければ、使い方を覚える負担だけが増えてしまいます。まずは、受け取ったものを、誰が、どの形にして、誰へ渡しているかを書き出します。たとえば「営業事務が問い合わせを読み、商品資料を探し、返信案を上司に確認してもらう」まで分けると、試す工程が見えてきます。
最初の到達点は、AIが文章を出せたことではありません。担当者が元の資料と照合し、足りない情報を見つけ、使える下書きに直せることです。確認まで含めて負担が減るかを確かめます。本記事では、業務の選定から小さな試行までを、架空の問い合わせ対応に沿って進めます。

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業務候補を比べる:選びやすい仕事と、先に整理する仕事
「時間がかかる仕事」を5つほど挙げ、頻度、元資料、完成形、間違いの影響を並べます。次は選び方の例です。どの会社でもこの順になるというランキングではありません。
| 候補 | 最初の試行で任せる範囲 | 選定理由・先に確かめること |
|---|---|---|
| 商品問い合わせへの返信 | 承認済み資料を使う下書き | 原文と比べやすい。納期・価格の確定と送信は人が行う。 |
| 会議メモの整理 | 決定事項・担当・未決事項の整理 | 完成形を決めやすい。決定と提案を確認できる参加者が必要。 |
| 社内資料の一覧づくり | 資料名・版・内容の候補表 | 参照元を残せる。ただし最新版や閲覧権限の整理が先。 |
| 毎月の売上集計 | まず表計算の数式・集計機能を検討 | 同じ列から決まった計算をするなら、ルールを固定できる。 |
| 請求書の入力 | 書類から入力候補を作る | 金額・重複・保存条件の確認が必要。承認まで自動化しない。 |
| 契約や支払いの判断 | 初回の試行対象から外して検討 | 誤りの影響が大きい。専門判断と実行権限の設計が必要。 |
この架空の会社では、問い合わせへの返信を選びます。承認済みの商品説明があり、上司が確認でき、下書きのまま止められるからです。資料が古い、確認者がいない、入力可否が決まっていない場合は、同じ業務でも準備を先にします。
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AIを使わず、表計算や決まったルールで済む場合もある
作業を見直した結果、生成AIが必要ないこともあります。判断の目安は「答えまでのルールを固定できるか」です。合計、条件に合う行の抽出、同じ形式への並べ替えは、表計算や既存ソフトの機能で処理する方法を先に検討できます。
| 作業の性質 | 検討する方法 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 入力列と計算式が毎回同じ | 表計算の数式・ピボット集計(項目別に合計する機能) | 参照範囲と例外値。数式にも設定ミスは起こる。 |
| 条件と動作が明確 | ルールによる仕分け・通知・取込 | 例外時に止められるか。必要な機能が既存環境にあるか。 |
| 文章の表現や並びに幅がある | AIで下書き・分類候補を作る | 資料外の補完や分類違いを、担当者が見つけられるか。 |
| 元の情報自体が不足 | 資料と業務手順を整理する | AIに欠けた事実を作らせず、情報の持ち主へ確認する。 |
たとえば「問い合わせを受けたら担当者へ知らせる」は決まったルールで、「長い問い合わせから質問を抜き出す」はAIの候補作成で分ける方法があります。すべてをAIにまとめる必要はありません。使っているソフトで何ができるか、追加費用や管理負担も含めて確認します。
比較演習:同じ合計を、数式で出してみる
架空の売上表でB2に1,000、B3に2,000、B4に1,500を入れ、B5に =SUM(B2:B4) と入力すると、合計は4,500です。GoogleスプレッドシートのSUM関数の公式説明でも、数値やセルの合計を返す関数として案内されています。
このように列と計算範囲が決まる仕事は、まず数式で運用できるか試します。文章を読み取って金額の候補を作る工程と、確定した数字を合計する工程は分けてください。表の途中に行を追加した場合や、数字が文字列で入った場合は、参照範囲と入力形式を人が確認します。
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一貫した演習:問い合わせから、送信前の下書きまで
以下は、実在の会社・顧客情報を使わない教材です。商品名、数量、条件はすべて架空。出力例も説明用に作成したもので、特定のAIサービスの実行ログではありません。実際の出力が同じになるとは限りません。
1. 入力する材料を分ける
2. 指示文を入れる
あなたは営業事務の下書き作成を補助します。 下の「問い合わせ」と「承認済み商品メモ」だけを使ってください。 目的:不足情報を確認する返信案を作る。 禁止:在庫、価格、納期、回答日を推測して約束すること。 出力:①件名 ②返信本文 ③社内で確認する事項。 不明点は「要確認」とし、確定事項と分ける。 問い合わせにある質問を漏らさない。 問い合わせ:サンプル収納ケースを20個、来週までに購入したいです。 色と送料も教えてください。 承認済み商品メモ:色は白・青。 送料は配送先と数量を確認して案内する。
3. 想定出力を受け取る
4. 人が修正する
この出力は読みやすくても完成ではありません。「白・青をご用意」は在庫があると受け取られる可能性があります。また、問い合わせの「来週まで」は日付が曖昧で、希望の色も分かりません。確認担当者は、元の問い合わせと商品メモに戻って修正します。
| 点検箇所 | 気づいたこと | 修正 |
|---|---|---|
| 色の説明 | 色の種類と在庫が混ざりやすい | 「色の種類は白・青です。在庫は別途確認します」とする。 |
| 希望条件 | 希望色と具体的な到着希望日がない | 希望色と、具体的な到着希望日を尋ねる。 |
| 送料 | 配送先が不足している | 確認に必要な配送地域を尋ねる。不要な情報は求めない。 |
| 約束の内容 | 返答日時は確認できていない | 「明日までに回答」などを追加しない。 |
5. 修正後の成果物
件名:サンプル収納ケース20個のお問い合わせについて お問い合わせありがとうございます。 サンプル収納ケースの色の種類は白・青です。 在庫と納期は、別途確認のうえご案内いたします。 ご希望の色、具体的な到着希望日、配送地域を お知らせいただけますでしょうか。 いただいた条件をもとに、送料も確認いたします。 [担当者の署名]
この文章も練習用です。実務では、連絡履歴、宛先、社内の商品情報、必要な配送情報、返信方針を担当者が確認してから送ります。署名の空欄や確認用メモが残っていないかも点検します。
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試す人・資料・順番を決める
最初の試行は、少人数で担当を決めます。次の計画は例であり、支援契約の期間や所要時間を確約するものではありません。実データへ進む前に、利用サービスと入力する範囲の承認を済ませます。
| 順番 | 担当の例 | 用意するもの・作業 | 終了時に残すもの |
|---|---|---|---|
| 準備 | 業務担当+責任者 | 作業の流れ、承認済み資料、利用ルール、確認できる担当者 | 対象と対象外、入力可能な情報、確認者を記したメモ |
| 通常手順を記録 | 業務担当 | 架空または承認済みの練習案件を、従来の手順で処理 | 準備・作成・確認・修正の時間と完成物 |
| 架空データで試す | 業務担当+確認者 | 通常例、情報不足例、矛盾する例でAIの下書きを確認 | 指示文、出力、修正版、修正理由 |
| 承認した範囲で試行 | 業務担当 | 案件を限定し、送信・反映前に毎回確認 | 同じ形式の記録表と、困った点 |
| 継続を判断 | 責任者+担当者 | 所要時間、重大な誤り、戻した件数を比較 | 継続・対象縮小・中止の判断と次の見直し日 |
「通常例だけ10件」のように件数だけを満たして終わらず、情報不足や条件の矛盾も含めます。少数の試行は問題発見のためで、本番の精度や安全性を証明する試験ではありません。担当者が資料と照合できない場合は、先に資料や確認体制を整えます。

社内担当と、外部に依頼する仕事を分ける
専任のIT担当がいなくても、業務を知る人と利用を決める責任者は必要です。社内では資料の正しさ・入力できる範囲・成果物の採否を決め、設定や連携、操作説明などの不足する作業を外部へ相談する、という分担から考えられます。これは当社の進め方の提案です。IPAのクラウド安全利用の手引き(項目7・12)も、管理担当者と利用者の役割、サポートの内容・条件を確認項目にしています。
中止の基準も先に言葉にします。このメール演習なら「原文にない納期を確約した」「別の案件の情報が混ざった」は送信を止める対象です。軽微な言い回しの修正と分けて記録し、原因や確認方法が決まるまでは対象を広げません。重大さの基準は、実際の業務の影響に応じて責任者が決めます。
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記録表:作成時間だけでなく、確認と修正も測る
次の列を表計算ソフトに用意してください。時間は同じ作業範囲で測り、資料探しや修正を除外しないようにします。AIあり・なしで難しさの違う案件を比べると結果が偏るため、案件の条件と順番も記録します。同じ題材を二度処理すると慣れの影響があることも、評価に残します。
架空の記入例:案件「練習01」、方法「AI」、準備2分・作成3分・確認4分・修正1分で合計10分。「納期の推測を削除、確認者A、下書きとして使用」と残します。
試行記録の列を開く
日付/案件ID/通常・情報不足・例外の区分 方法(従来・AI)/参照資料・版/指示文の版 準備分/作成分/確認分/修正分/合計分 根拠のない追加/質問の漏れ/重大な誤り 人が直した内容/使った・保留・従来手順へ戻した 確認者/次回に直すこと
「作業に使った時間が減った」と「同額の経費が削減できた」は別です。空いた時間を何に使えたかも確認します。問い合わせの一次確認、顧客への説明、滞っていた資料整理など、会社が改善したかった仕事につながっているかを見ます。
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うまくいかないときは、症状ごとに戻す
| 起きたこと | まず行う対応 | 続ける前の条件 |
|---|---|---|
| 価格・納期などを作ってしまう | 出力を使わず、元資料との照合と指示を見直す | 不明点を保留にでき、確認者が見抜ける |
| 必要な質問が抜ける | 必須項目をチェックリストにする | 原文との対応を確認できる |
| 確認の方が長くかかる | 対象を短い定型問い合わせなどへ絞る | 準備・修正を含めて再比較する |
| 資料が食い違う | 資料の管理者に正しい版を確認する | 使う資料と版が確定する |
| 入力してよいか判断できない | 追加入力を止め、責任者へ確認する | 目的・契約・設定・対象情報の承認がある |
| ツールが使えない・読み込めない | 元の手順へ戻し、未処理案件を管理する | 二重処理や送信漏れなく再開できる |
同じ重大な誤りが繰り返される、確認担当が確保できない、元資料が信頼できない場合は、対象を広げません。ツールを変える前に、資料、完成条件、作業の切り方のどこに問題があるかを確認します。
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始める前のチェックリスト
- 改善したい作業と、今回試さない作業が決まった。
- 通常の表計算や既存機能で済む部分を確認した。
- 実データを入力する環境と条件を承認した。
- 確認に使う元資料と版、確認者が決まっている。
- 通常例・情報不足・矛盾する例を練習に含めた。
- 指示、出力、人の修正版、所要時間を記録できる。
- 失敗したときに止め、元の手順へ戻せる。
- 続けるか判断する担当者と、見直し日を決めた。
生成AIの回答には不正確な内容が含まれることがあります。個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月)もこの点を示しています。本記事の選定方法、演習、計画、記録表はシゴツグの実務上の提案であり、公的機関が効果を保証した手順ではありません。
まずは業務候補をひとつ選び、架空の材料で「出力を直して完成させる」まで試してみてください。どの作業が適しているか決まらない場合は、現在の業務の流れから一緒に整理できます。
出典は該当箇所に記載しています(2026年9月8〜9日確認)。


