01
賃金の数字は「いま」と「これから」を分ける
賃上げへの対応を考えるとき、まず自社の給与と、適用される最低賃金を確認します。最低賃金は賃金の下限に関する制度であり、実際の平均時給ではありません。改定があったからといって、全社員の給与が同じ割合で増えるとも限りません。
2026年9月9日の確認時点で、次のように整理できます。全国の数字は地域別最低賃金の加重平均で、全国一律に適用される金額ではありません。
| 対象 | 発効済みの令和7年度改定 | 令和8年度の公表内容 |
|---|---|---|
| 全国の加重平均 | 1,121円。前年の1,055円から66円上昇。 | 9月3日公表の答申集計は1,177円。現在の適用額ではない。 |
| 徳島 | 1,046円。2026年1月1日発効。 | 8月24日資料は1,103円の答申、11月1日発効予定。決定・発効済みとは区別。 |
| 香川 | 1,036円。2025年10月18日発効。 | 1,092円への改正を決定・9月1日公示。発効日は2026年10月1日で、確認時点では未発効。 |
出典:厚生労働省 令和7年度全国一覧、令和8年度答申の全国集計(9月3日)、徳島労働局の答申資料、香川労働局の改正決定。全国の令和8年度答申は10月以降に順次発効する予定とされています。改定額を給与計算へ使う際は、地域・業種等の適用条件と最新の決定・発効日を担当者が確認してください。
02
「時間が空く」と「支出が減る」は、別の効果
仕事を30分早く終えられても、月給が同じなら、その30分相当の現金が会社へ戻るわけではありません。一方で、残業の発生を抑えられたり、増えた注文へ対応できたりすれば、別の意味があります。どの変化を目指すのか、試す前に選びましょう。
| 見たい効果 | 確認する数字 | 早合点しないこと |
|---|---|---|
| 残業に伴う支払いの減少 | 勤怠と給与計算で確認した実際の差 | 作業時間の短縮分をそのまま残業減に置き換えない。給与条件や業務量の変化も確認。 |
| 追加の採用・外注の必要性を抑える | 処理件数、未処理、現場の余力、追加依頼の予定 | 将来の採用費を、今月減った支出として計上しない。 |
| 本業へ使える時間が増える | 顧客対応、提案、現場改善へ実際に使った時間 | 空いた時間を使っただけで売上が必ず増えるとはしない。 |
人員数の削減を先に決めると、確認や例外処理に必要な仕事まで見落としやすくなります。ここでは、今いる人が担当する仕事を無理なく終えられるように、繰り返す手間を減らす順番を考えます。
生まれた時間は、お客様への説明や、経験のある社員からの技術継承にも使えます。たとえば、判断の理由を手順書に残し、別の担当者が同じ作業を試す時間を設けます。一人が速く処理できることに加え、その人が不在でも仕事を続けられるかを確かめることが、事業を支える改善につながります。
03
先に減らすのは、繰り返している事務の工程
社員に「AIで何ができるか」を尋ねるより、「一日に何度も同じことをしているのはどこか」を聞いてみてください。手元の書類を見ながら、受領、入力、確認、承認、保管までを分けます。
- 同じ値を二つの表に写している:まず既存ソフトの取込や参照機能を確認する。
- 資料の所在が分からず聞き回っている:保存場所・版・管理者を整理する。
- 似た問い合わせへ毎回文章を作っている:承認済み資料を使うAIの下書きから試す。
- 数字を毎回文章で計算させている:確定した数値の合計は表計算で行う。
最初は担当者が正誤を確かめられる仕事を選びます。給与、支払い、採用の判断をAIの出力だけで確定する工程からは始めません。入力可能な情報と確認担当を決める準備も、導入の作業に含めます。
04
架空の計算例:確認時間と利用料まで含める
以下は計算方法を説明する架空例です。実績、料金表、標準的な効果ではありません。1か月で200件の事務を処理し、従来は1件12分、試行では作成4分+確認・修正3分になったと仮定します。
| 計算するもの | この架空例の計算 |
|---|---|
| 従来の作業 | 200件 × 12分 = 40時間 |
| AIを使う作業 | 200件 × 7分 = 約23.3時間 |
| 定着後の毎月の管理 | 指示や資料の見直しなど2時間 |
| 差し引き空いた時間 | 40 − 約23.3 − 2 = 約14.7時間 |
| 時間の参考換算 | 仮の社内評価単価1,800円 × 約14.7時間 = 約26,400円 |
| 毎月の支払いの仮定 | 任意で契約した支援15,000円+外部ツール5,000円=20,000円 |
約26,400円は時間を比較するための参考値で、給与支出の削減額ではありません。支援費の15,000円も架空の値で、シゴツグの料金ではありません。仮に実際の残業等の支払いが変わらなければ、現金面では毎月20,000円の利用費が増え、約14.7時間を別の仕事へ使える状態です。
さらに初期費用を仮に60,000円と置くと、6か月の支払額は60,000+20,000×6=180,000円。初期の社内準備が8時間なら、それも別枠に記録します。税の扱いをそろえた架空の比較で、ツールの使用量増、追加対応、移行費は別途確認が必要です。
実際の費用は導入・サポート・ツール代の見方に沿って整理します。時間の価値と支払額を単純に差し引くだけで投資を決めず、余力を何に使うかまで合意してください。
05
導入前後は、同じ仕事の範囲で測る
作成ボタンを押してから出力が出るまでだけを測ると、資料探しや修正が抜けます。通常の手順でもAIを使う手順でも、準備・作成・確認・修正を含めます。繁忙期と閑散期、簡単な案件と複雑な案件を混ぜて比べないようにします。
- 対象業務、件数、完成条件、確認者を決める。
- 通常例と情報不足・訂正などの例外を分け、従来の時間と手戻りを残す。
- 承認した範囲で試し、AIの準備・確認・修正と管理時間を残す。
- 勤怠、処理件数、未処理、追加の支払いを別々に比較する。
- 時間が空いた理由と、他の担当へ負担を移していないかを確認する。
作業の記録には試行記録表を使えます。給与・勤怠の記録をAIへ入力する必要はありません。作業量と時間を集計した情報で目的を達成できるか、先に検討します。
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継続を決める前のチェックリスト
- 確認や修正を含めても負担が減った。
- 誤りや未処理が増えず、確認担当が対応できる。
- 支援費と外部ツール代、初期の社内準備を把握した。
- 時間の換算額と実際の支出減を分けて説明できる。
- 空いた時間の使い道と、次の見直し日が決まっている。
確認に時間がかかりすぎるなら、扱う書式を減らす、資料を整える、AIを使わない方法へ戻すという判断もできます。賃金への対応は、業務の見直しに加えて価格や受注量、配置等も含む経営課題です。AIだけで人件費の負担が解消すると約束せず、改善できる工程から確かめます。
出典は該当箇所に記載しています(2026年9月8〜9日確認)。


